南八ヶ岳から北八ツへ 
赤岳(標高2899.2m)硫黄岳(2760m)

2009年1月1月9〜12日長野県
メンバー 2人
 コース:美濃戸口〜天望荘〜赤岳〜硫黄岳〜本沢温泉〜中山峠〜渋の湯
私の「八ヶ岳に行きたい」という誘いで、山の会の女性4人で、1月の3連休に八ヶ岳に行くとになった。ベテランのNさんがリーダーを引き受けてくれる。トレーニング計画を立ててくれ、アイゼントレーニングを始めた。ところが12月になって2人が行けなくなる。「2人だけど、どうしますか?」とNさん。「車で行けないので、バスで行きましょう」と私。迷うことは無かった。
山行前日、2つ玉低気圧が日本を通過し、3連休はこの冬一番の寒波がきて大荒れになるという。なんか神様に「お前はそんなに、危険な冬山に行きたいのか?」と問いただされているような気がした。
「山は逃げない、またいつでも行ける」と言うが、しかし人生の半分とっくに過ぎた私には、山は1年1年遠くなる。体力の減退、体の故障、親の介護、いつ行けなくなるかわからない。Nさんが一緒に行ってくれるこのチャンスに絶対に行きたいと思った。


9日(金) いつも車でバスで行くのは初めて、ワクワクしながら家を出る。大阪午後10時発甲府行き夜行バスに乗る。3列シートでゆったりしている。京都に立ち寄る頃には爆睡していた。午前5時30分小淵沢高速バス停に降りたの私たち2人と単独の女性の3人だけだった。うっすらと雪の積もった真っ暗な高速道路、なんとも淋しいものだ。5分ほどしたらNさんが頼んでいたタクシーが迎えに来てくれて、ホッとする。


10日(土)曇り時々雪
 美濃戸口7:10---美濃戸8:10----行者小屋11:15/12:00----天望荘14:10
午前6時半 美濃戸口に近づくと雪が強く降ってきた。荒れるのかな〜。気分が沈む。早朝だったが、八ヶ岳山荘が開いていて、中で準備をする。朝定食やうどんもある。コンビニで弁当を買ってきたが、ここで温かいものを食べればよかった。

美濃戸までの林道、うっすらと新雪が積もる

美濃戸山荘は閉まっていた
準備をしているうちに夜も明ける。小雪の中出発する。美濃戸までは新雪の林道を歩く。数台の車が追い越していく。この雪道なら夏より走りやすそうだ。

南沢、行者までの道は、なだらかで歩きやすい

シラビソに積もる雪が北八ツの雰囲気
美濃戸から南沢を登る。トレースがしっかりついて歩きやすい。シラビソに雪が積もって北八ツの雰囲気、時々晴れ間も見えて、だんだんうれしくなってくる。天気に一喜一憂だ。2〜3組に追い抜かれるが、人は少ない。行者小屋に到着。まだテントは1張もない。思ったほど風がないので地蔵尾根を登ることにする。雪が降りガスって山は見えない。防寒対策、服を重ね着して、手袋を替え、アイゼンをつける。

行者小屋、軒下で準備をする

行者小屋前、まだテントは1つだけ、山ははガスって見えない
12時登り始めるがいきなり急登だ。クサリ場、雪がやわらかくアイゼンが効かず、足がずるずる落ちる。Nさんを見ると、片足が落ちる前に次の足を出して、つま先でガンガン登っている。まねをしようと思ったが、ちょっと登っただけで息切れしてしまった。運良くNさんのアイゼンの紐が緩んで締め直ししている間に、お湯など飲んで息を整える。その後も急登が続く。Nさんに置いていかれないよう必死、四つんばいになって登る。2組ほど抜かれて私たちが最後尾になった。雪と風で人が登った跡は消えていたが、クサリのある夏道をたどった。
最後のクサリ場左へトラバースするところで、Nさんが滑ったが3mほどですぐに滑落停止して止まった。ホッとする。それからも急登が続き、お地蔵様がある稜線にでた。「小屋はもうすぐだよ」Nさん。強風や吹き溜まりに足を取られ、やっと午後2時すぎ天望荘に到着する。

談話室で夕食のかす汁を食べる
大部屋は寒いからと二人用の個室に案内してくれた。食堂にはコタツがあって、ぜんざいをサービスしてくる。天国のようだ。宿泊客は10人ぐらいで、ほとんどが明日は横岳から硫黄岳に行くという。横岳経由で行くとずいぶん時間短縮になる。Nさんもチョット迷ったようだが、「基本計画書どおり行動する」ということで、予定通り赤岳鉱泉まで下りて、硫黄岳へ登り返すコースで行く。
夕食は暖かい談話室で自炊だ。今日の夕食は、かす汁は、お湯を入れればいいように作ってきた。天望荘はお湯、コーヒー、お茶飲み放題、自炊にはとてもありがたい。夕食後、湯たんぽが配られた。外は強風が吹き荒れていたが、湯たんぽは朝まで暖かくぐっすり寝ることができた。


11日(日)晴れのち曇り
天望荘7:30----赤岳山頂8:40/9:00---行者小屋9:50----赤岳鉱泉10:20----赤岩の頭12:35---硫黄岳13:00---夏沢峠13:45---本沢温泉14:50
6時出発して日の出を赤岳山頂で見るつもりで、午前4時半に起きて準備したが、外はガスと強風、視界も悪いので、出発は夜が明けてからにする。準備に少々手間取って7時30分小屋を出発する。それでも私たちが一番の出発で先行者がいない。Nさんはルートを選びながらガンガン登っていく。私はどうしても遅れ気味になる。高度のせいか息切れも激しい。明るくなり、少しずつ青空も広がってくると、不思議と力が湧いてくる。

ガスの切れ目から日の出が見える

8:40 赤岳登頂
8時40分赤岳登頂、−20度強風。北アルプスは雪雲に隠れていたが、南アルプスや富士山、北八ツ方面が雲の切れ目から望めた。真っ青な青空も広がり山頂で20分も展望を楽しんだ。カメラは電池が切れてしまい、入れ替えてもすぐ黄色になる。Nさんのカメラはシャッターが下りなくなった。

富士山 チョット霞んでいるが…

眼下に阿弥陀岳

感動で座り込む?(強風で立っていられないのです)

北八ツ方面、右 赤岳頂上小屋
9時下山を始める。下り始めは前にいた3人が怖そうに下りているのでチョット緊張したが、Nさはさっさとアイゼンを効かせて下りていく。さすがだ!「お先へどうぞ!」と3人に道を譲られた。

赤岳から下り、ボチボチ人が登ってきます

文三郎尾根は展望のよい尾根です

たくさんの人が列をなして登ってきます

もうすぐ行者小屋です
続々と人が登っている。すれ違うのに神経をつかう。文三郎尾根は展望のいい、樹氷のきれいな尾根で、一番登りやすいので、人が多いらしい。登りは遅いが下りは速い。追い抜くことはあっても、抜かれることはない。50分で行者小屋に到着する。六甲山のアイゼントレーニングの成果だろう。

行者小屋前のテント場

樹氷の向こうに、大同心が見えます
行者小屋、今日はたくさんテントが並んでいる。Oさんたち3人がテントを張っているはずだがどれか分からなかった。10時20分赤岳鉱泉、ここで大休止してパンを食べる。調理パンは水分が多いのか凍っていた

赤岳鉱泉のアイスクライミングウォール

赤岩の頭から硫黄岳方面
赤岳鉱泉から硫黄岳へ登り返す。道はしっかり踏まれていて歩きやすい。赤岩の頭の手前、天望荘で一緒だった横岳経由のカップルとすれ違う。「硫黄岳は風が強かったけど、横岳は全然大丈夫でしたよ。」と言うが、女性はハーネスをつけてザイルで結ばれていた。「ちゃんと保険はかけているじゃん!」 保険のない私たちは危険を避けて体力勝負するしかありませんわ。

硫黄岳山頂、強風ガスで素通りする

夏沢峠への下り、雪は風で吹き飛ばされている
赤岩の頭から風が強くなる。岩場でルートを迷うところらしいが、人が下りてきたおかげで迷わず硫黄岳に着いた。硫黄岳山頂はあいにくガスって何も見えい。山頂標識前も素通り、大きなケルンに沿って下りて行く。吹きさらしの大きな尾根で風に飛ばされそうだ。耐風姿勢をとるが、風が弱まる時がない。いつまでも耐風姿勢をとっていても進めないので歩き出す

真ん中下、樹林帯の中に夏沢峠が見える

夏沢峠、後硫黄岳はガスの中
。14時夏沢峠手前の樹林帯に入ってやっと風が弱まった。峠からはトレースのあるジグザグの道を下って行く。夏沢峠から50分ほど下ると河原の雪の中に白濁した野天風呂が見えた。「誰も入ってないから、今なら入れるよ。」「う〜ん、あの雪の中で裸になる勇気はないわ。」Nさんはこの野天風呂に入るのを楽しみにしていたようだが、冬は脱いだ服が凍ってしまうので、入る人はあまりいないらしい。

本沢温泉の野天風呂
ここでなぜかトレースが消え、行ったり来たりして小屋を探すのに20分ほど迷ってしまう。この露天風呂から5分ほど下ったところに本沢温泉の建物があった。午後3時本沢温泉の小屋に着いた。大きな小屋だが、20人ほどの団体さんが来ていて、お風呂は交代でゆっくりは入れなかった。でもお湯は有馬の金泉のような色をしていて、体はとても温まった。ここも自炊は薪ストーブのある談話をつかわしてくれた。今日は簡単にレトルトカレーだが、風呂上りのビールが格別においしかった。2日間予定通り歩くことができて、今日は二人とも大満足だった。


 12日(月)
本沢温泉7:00---みどり湖分岐8:15---中山峠10:15/10:40---渋の湯12:20
準備して外に出ると雪が降っている。出かける前の天気予報では、今日一番お天気がいいはずだったのだが… 山はすっかり雪雲におおわれている。風雪では稜線は厳しい。同室の2人が歩いたというみどり湖方面から中山峠に出るルートに変更を検討する。Nさんは迷っていたようだが、迂回することを強く主張した。天狗岳手前の痩せ尾根は、この天候では危険だと思った。あえて風雪の稜線を歩くこともない。小屋の前でかなり迷った末、夏沢峠とは反対の方に歩き出す。

本沢温泉

中山峠とみどり湖の分岐
10分ほど林道を下りて、中山峠への道に入る。ふかふかの雪、最初は北八ツのスノーハイクという感じ、小雪の中気持ちよく歩いていたが、みどり湖への分岐を過ぎると、傾斜がきつくなる。アイゼンをつけるが、雪がやわらかくてアイゼンが効かない。「踵に体重が残るからずり落ちる。蹴り込んだらつま先に体重をかけたまま登るように」Nさんがアドバイスを受けるが、分かっていてもなかなかできない。筋力の違いか?
ヒイヒイ、ゼイゼイ、やっと中山峠に着いた。荷物を置いて天狗岳の方に行ってみる。5分ほど登って稜線にでるが、雪と強風が吹きつけ、ガスって何も見えない。諦めて戻る。小雪の中黒百合ヒュッテの前を通り、下山する。

渋の湯登山口、無事下山できホッとする

温泉の裏に日本カモシカ
12時20分渋の湯下山、バスは14時55分それまで、ゆっくり温泉につかってバスを待つ。1時間半も温泉に浸かったおかげで、すっかり疲れがとれた。帰り高速が渋滞して、家に着いたのは12時を過ぎていたが、体は軽く気分もルンルンだった。


 最初の予定通り美濃戸から渋の湯まで、厳冬の八ヶ岳南と北を結ぶルートを歩くことができ、今までにない大きな達成感、充実感を得ることができました。 これは女性2人だけで歩けたというのも大きかったと思います。ペースの遅い私に合わせて歩いてくれたNさん、弱気な私を引っ張ってくれたNさん、本当にありがとうございました。今回歩けなかったな夏沢峠〜天狗岳〜中山峠、またいつかリベンジししたいと思います。


  
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